The Inner Power of Brands — ブランドの内なる力 #designship2018
※この記事はDesignShip 2018 2日目のトーク、Tomo Oginoさんによる「The Inner Power of Brands — ブランドの内なる力」の内容を書き起こしたものです。記事を早く出すため体裁が整っていない部分もあるかと思います。あとで気が向いたら直します。
Tomo Ogino 氏経歴(DesignShip Webサイトより)
米ロサンゼルス在住、コミュニケーション・デザイナー。武蔵野美術大学、視覚伝達デザイン学科卒。同研究室および日本の企業に勤務した後、LAのArtCenter College of Designでグラフィックデザインを学ぶ。在学中にNYのType Directors Clubを受賞。日米のスタートアップや企業、サービス等のブランディングに携わる。制作過程における、ブランドの本質を内側から探るワークショップが人気を博し、現在では個人向けにセルフ・ブランディング・ワークショップも行っている。
トーク内容
ブランドとは
好きなブランドはなんですか?あらゆるものを人はブランドと呼ぶ。何を持ってブランドと呼ぶのか。ロゴ?パッケージデザイン?店での体験?ブランドは実在しない。ブランドは一種の概念。1万円札を作るのには、22円。1円は3円。人々の共通認識がこうさせている。ブランドも似たようなもの。ブランドは、そこに関わる人の共通認識で構成されている。ブランディングは人々が否定できない価値を創造するプロセス。それを共通認識として浸透させていく旅。その地図をデザイナーがどうやってつくるか。
ある実体験
卒業後、フリーランスでやっていこうと思った。プロマネをかじったこともあったり、デザインも学んだ。結婚してグリーンカードをもらえたので、アメリカで働くこともできた。1人でもやっていけると思った。初めての仕事はコーヒーショップでの仕事だった。たくさんリサーチをした。社長に持ってったら気に入ってくれた。数回プレゼンを通して形が見えてきたが、どうも雲行きが悪い。社長の反応が悪い。ある時電話があり、学科長を呼びたいと言われた。実際その日になってMTGしてみたら、学科長も好意的に言ってくれた。いいかんじにMTGが終わった。でも次のプレゼンで社長の反応が悪い。一晩寝て考えさせてと言われた。もしかして素人だから頭の中に浮かべることができていないのでは、と思った。それならフォトショ画像をいっぱい作った。そしたらあまりこのデザインは受け入れることができないと言われた。初期の頃に作ったデザインを採用すると言われた。もっとクライアントに寄り添わなければいけないのでは、と思った。このブランド自体のサービスや製品の本質を引き出す努力を怠っていた。自分が感じたことだけで構成していた。
思い出したこと。ある会社でのこと。デザインをする前にかならずワークショップをしていた。クライアントと一緒になってやっていた。ブランドの本質を引き出すワークショップができないかと思った。社長の他にもいろんな人を集めてやった。宿題として、あなたのブランドを表すと思うものを持ってきてくださいと言ってみた。それはどうしてなのかの理由をきいてみた。いろんな言葉が集まってきた。ブランドとして、世界に何を伝えたいのか、どんな価値を生み出しているのかをクリアにした。クライアントも一緒になってブランドをデザインした。
これら本質的価値を見つけるための旅の地図を元にビジュアルデザインを作る。何かを作るときは、ワークショップに立ち返る。そうすることによって強いブランディングを作ることができる。ロゴを作る必要はないけどワークショップやってくれと呼ばれることも出てきた。さらには個人向けにやってくれないかと言われた。
自分は本質を探すための旅のナビゲーターであり、ライフミッションだと思った。
本質とは
マーケティングやデザイン思考を駆使すればできるのか?誰かに聞けば答えが出てくるのか?私達は一体誰を見つめているのか?あなたが愛していない製品は人々も愛することができない、内側から外側に向けた意味のあるイノベーションという言葉がある。
マーケティングやデザイン思考は必要であると思う。でもそれだけではネガティブな問題だけにフォーカスしてしまう、ほしい未来、新しい価値を創造することができない。開発者がどのような価値を生み出したいかという思いが大事。Howだけでなく、根源的なWhyを問う時代。車ってほんとにいるのだろうか、という時代。自分たちの生活を豊かに愛情に満ちたものにしたいという根源的なポジティブな思い。
アメリカのドアベルの話。かつて小さい丸いドアベルが主流だった。日本のインターフォンのようなものはセレブが使うようなものだった。近年、リングというデバイスが出てきた。インターフォンで、カメラがあるもの。このリングのすごいのは、どこにいてもスマホで対応できること。日本にいながらアメリカの様子がわかる。さらに、その動画を近所の、リングを持っている人たちにシャアすることができる。くまが出たという情報がシェアされたことがある。ある友人の話。ゲートに守られている場所に住んでいるけど、一体誰から自分たちを守っているのかわからないと言っていた。セキュリティとは一体何か。守られている安心感を自分たちは欲している。得体の知れない地域というあやふやな概念から、お互いを守るコミュニティという安心感に変えた。このドアベルは、本人の強い思いから作られた。
ブランディングにおいて、本質とは、そのブランドが世の中に生み出している根本的な意味。リングが売っているのはドアベルではなく、安心感。ブランディングでは本質を掴む必要がある。
エクササイズ
自分というブランドを通して、どんなことを本質的にやっているのか。
- Who(肩書、仕事、役職)
- What(作っているもの、作りたいもの)
- Why(どうしてそれを作っているのか、作りたいのか、どうして好きなのか、それを通して何がしたいのか)
- Value(仕事や人生を通して、世の中に作っている、作りたいあなたの価値とは)
に紙面上で区切って演習してみる。
本質が見つかると、ライフミッションが見つかる。世界に何を伝えたいのか、どんな価値観を世界に生み出しているのかがわかるブランドは、強い。