12/1 グッドデザイン賞受賞プロダクトのUX開発手法 UX & Service Sketch #20に参加してきました #UXSketch
グッドデザイン賞受賞プロダクトの話を聞けるというのは面白いなと思ったのでブログ枠で参加してきましたのでレポートします。
トーク
「AbemaTV立ち上げの泥臭い話」@鬼石さん
AbemaTVについて
- AbemaTV
- 立ち上げから半年経った
- インターネットテレビ局
- 30チャンネルがスマホで無料で楽しめる
- 1000万ダウンロード突破
- 最近の施策
- ドラマなどを入れて視聴習慣を付けてもらい継続率を上げていく
- 最近の状況
- アワード受賞、高レビュー評価
- →グッドデザイン受賞の理由 by 鬼石 広海 | AbemaTV参照
高品質を保てたポイント
★ 開発者全員がUXデザイナーになる
- difficult
- リニア配信アプリでの成功事例がなく、ゼロベースで生み出す必要がある
- オンデマンドは狙わなかった
- easy
- そもそもサービス自体がシンプル
- 自分が利用シーンを想像し易い
- プロトタイプでブレスト
- 参考になるものがないし、機能はシンプルなんだし
- 開発者5人それぞれが考えるいいものをプロトで表現
- ツールはなんでも良いので、自分が使いたいと思える最高のTVアプリを作る
- 夕会でプロトタイプを共有
- プロトタイプの総数250
- 共通して考えていたこと
- 会員登録なし
- コンテンツまでを最短にする
- 複数デバイス間の情報の共有
- ワンタイムパスワードでデバイス間の共有を可能にした
- 両隣のチャンネル先読み
- 切り替えた瞬間に番組が始まっている
- ストレスがなく視聴ができる
- スワイプ位置と音量・スケールを同期
- 指の動きに従順に応える
- 帰属感が生まれる
- 会員登録なし
- 全員がUXデザイナーになることで、様々なアプローチで使い勝手を向上することができた
★経営者がプロダクトにフルコミット
- なぜ250個もプロトを作ったのか
- 社長が妥協を許さなかった
- 社長と毎週の定例MTGで進捗共有、直接議論
- 社長はユーザ視点でフィードバックをすることを心がけていた
- 社長は解決策を提示するのではなくジャッジをする
- 社長は説得、プレゼンを嫌う
- 作っているものはユーザが使うもの
- ユーザに対して説得、説明はできない
- 使ってみて、価値を感じなかったらもう使われない
- 細かい仕様やデザインまで決済
- 他部署からのあらゆる要望をブロック
- 現在AbemaTVに850人関わっている
- 各部署のいろんな要望を入れない
- 要望を聞くと妥協点を見出さなければならなくなってしまう
- 「リンクを入れたい、広告がほしい」
- シンプルさを保ちたい
- このあたりの話は権力が最高品質のクリエーティブを生むという記事でも語られている
「開発者全員がUXデザイナーになる」というのはとても良いなーと思いましたし、そうあるべきだと思いました。開発者とはいえどもコードのこと、技術的実現可能性だけ考えていたら良いサービスは作れませんからね。あとプロトタイプを250も作ったというのはすごいなと思いました。普段ここまでプロトタイプに時間をかけられるかは別として、プロトタイプを作って皆で完成像を共有してから開発を進めるとプロダクト開発ってうまくいきやすいので積極的にやっていきたいなと思いました。
「無印良品5つのデザインプロセス」 @矢野さん
「デザインで感じ良い暮らし、感じ良い社会へ」
- 無印ブランド
- 1980年、消費社会へのアンチテーゼから始まった
- 最初は40品目、ほとんど食品
- 素材の選択、工程の点検、包装の簡略化
- シンプル、ナチュラルのイメージは上記をやっていたら自然になった
- 今は7000品目
- 無印は変わらないでなぜ大きくなれる?
- アドバイザリーボードの存在が大きい
- クリエイターだけでできている
- 良い商品、良い環境、良い情報のサイクル
- 田中さんが中心になってバランスを取っていた
- 今もタグ、コピー、ポスター、店内環境をデザインしている
- 海外店舗
- 大きなシャンデリア
- ペットボトル、ゆたんぽなどに電飾を入れて作っている
- いかに簡素なもので作り上げるか
- 大きなシャンデリア
- 一部店舗で生活に関する本も販売
- 滞留率、売上も上がった
- 商品作り
- 「これがいい」ではなく「これでいい」を目指す
- お金を貯めて百貨店で赤いソファーを買ってあとは無印でいいやという感覚
- 明晰で自身に満ちた「これでいい」を実現する方法
- 1.ワールドデザイナーの存在
- 2.グローバル、ローカル、ユニバーサル
- 食文化などから生まれる日常品から作る
- Found MUJI
- Foundチームがいて、文化に触れて探しまくる
- そのまま売るときもあればリデザインするときもある
- 3.素材の探求と生産者、環境への配慮
- 4.生活者との交流から
- くらしの良品研究所(web)
- 人をダメにするソファーはここから生まれた
- idea park
- デザイナーがプロトを作ってお客様に投票してもらって商品化する
- 5.Observation
- お宅訪問
- 知らない人のところには行くな、家族、仲のいい人
- 片付けられては困る
- 香港
- 比較的最近Observation始めた
- コンパクトライフ
- 買い物が好き、捨てるのが嫌い、掃除も嫌い
- くらしが美しくなれば社会は良くなる
普段ITがあまり絡まないプロダクト開発の話を聞くことはなかったので、新鮮で楽しかったです。"「これがいい」ではなく「これでいい」を目指す"という言葉は印象的でした。そのような思想が「特別印象に残るわけではないけどでも、そこにあることに違和感もなく、空間に溶け込んでいる」製品を作って、幅広い人に受け入れられるようになっているのかなと思いました。
「RunGraphの開発プロセス」 @森田さん
- RunGraph
- 走りの記録をアートにする
- スマホアプリ
- 自分の記録をビジュアライズしてTシャツなどにプリントできる
- frontage × wow共同開発
- 今日のテーマ
- ほしいものを作る
- RunGraphのきっかけ
- frontageのある人から相談
- マラソンの参加賞としてもらったTシャツがダサくて外に着ていけない
- 参加賞のデザインをどうにかしていきたい
- 以前自転車、スポーツイベント会社で働いていた
- イベントアンケートで「参加賞のデザインがいいから参加した」というのがあった
- 少なくないニーズがあるのにデザインが良くないことが多い
- RunGraph開発へ
- 自分がほしいものを作って、自分が参加したいイベントに採用してもらうことを目標
- どういったものがほしいか
- 単にかっこいいではなく、意味のある、特別なデザイン
- RunGraphは見返すとその時の感情が蘇ってくることがある
- 自分にとって価値のある記録にはストーリーが存在している
- 走ったデータを使ってビジュアライゼーションするアイディアを考えた
- いけそう、という段階でスポーツイベントにアプローチ
- アイディアに対しては好意的
- しかし何の実績も無いサービスを採用してくれなかった
- 実際に見せてみないとダメっぽい
- マネタイズ
- アプリは全て無料
- Tシャツのお金の一部が収益になっているが売れていない
- 肌触りがわからないものに4000円は出せない
- 最近の様子
- スポーツイベントで採用してくれるところが出てきた
- 商品を実際に手にとって見られるブースを設けている
- wowについて
- 自主制作を大事にしている
- 利益生みにくいと思われるけど逆
- 作品を見た人からオファーが来たりする
- 今は東京駅八重洲口に作品が公開されている
- 妥協ができなくて大変だけど楽しいし魅力的な作品になる
- 何かを始めるとそれがきっかけで自分の世界が広がっていく
- 自主制作を大事にしている
日常のふとした不満を元に実際にプロダクト開発をしているというところや、着眼点が当事者ならではで面白いなと思いました。このトークを聞いてから「使ってみようかな」と思うほど、ビジュアルが素晴らしくて、よく設計されていているプロダクトだなと思いました。あと日頃から思っているのですが、良い製品は追い詰められたり指示されたときに生まれるものではなくて、自分の自由な発想から生まれると思うので自主制作が推進されているのはいいなーと思いました。
「髪の毛で音を感じる新しいユーザインタフェース「Ontenna」を世界中のろう者へ届けるために」 @本多さん
- どうしてできたのか、どうしていきたいか
- 大学1年のときにろう者に携わったことがきっかけ
- 市販されている音を伝達する装置
- 腕のデバイスなどは記号的なインターフェースになっている
- どういうパターンで音が鳴っているのかがわからない
- 腕に負担になっている
- Ontenna
- 人間の髪の毛で感じる
- 猫のひげと同じように
- ヘアピンのようなもの
- なぜ髪の毛?
- 振動を知覚し易い
- 麻痺などが少ない
- 手話、家事のときも腕に負担がかからない
- プロトタイプ
- ろう者の方と一緒に作成した
- 直接つけると気持ち悪い、服の上からだとわかりにくい
- 原理
- 音圧の変化を256段階の光と振動の強さに変換
- 利用シーン
- 掃除のコードが抜けてもそのまま掃除機をかけちゃうことがないように
- 本読んでて視覚情報が集中しているときでもインターホンに気づけるように
- 着信音が感じ分けられるように
- 髪の毛以外の部分にも使えるようにしてほしい
- →イヤリングもできた
- 現在の取り組み
- ユーザ調査
- 配布してフィードバックをもらっている
チームにろう者の方も入って開発されているということで、ホントにユーザに寄り添ったプロダクト開発をされているなと思いました。今回の場合は極端ですが、何のサービスであろうとユーザに直接聞いてみることは重要だと思います。例え自分もユーザの一人だとしても、開発の裏側のことを知っている人と知らない人では使い方、楽しみ方が異なってくると思うのでユーザの声は聞き続けて開発するべきだなと思います。
質疑応答
グッドデザインとは?
- 本多さん
- 誰か1人でもいいから笑顔にするものを作り出す
- 他人じゃなく自分でもいい
- 森田さん
- 使いたい、自分の成長を促してくれるアプリケーションを提供できることがいいデザイン
- 使いやすい、わかりやすいも大事だけど
- 早い自転車よりも乗りたい自転車をデザインしてあげること
- 矢野さん
- 無印はやりすぎちゃってもダメ
- 去年一番評価が高かったもの
- 成田空港格安飛行機の発着場
- 今年一番評価が高かったもの
- 890円のバケツ
- ターミナルの時と同じくらい喜んでいる
- 気持ちいい空間なのかのディテイルに拘れることがいいデザイン
- バケツのディテイル
- いろんなバケツの使い方がある
- 高いと蛇口に引っかかって困る
- 水いっぱい入れると手が痛い
- 重みに耐えられるように手厚くデザインする
- 鬼石さん
- 日常の生活の中で困っていることをアイディアで解決していく
- オンデマンドサービスは自分で探さなきゃいけない
- 意外と探すのはストレス
- 自分で探すよりも受け身のほうが楽
- →受け身にするサービスを作ってみたらどうなんだろう
- 日常のちょっとした不便を解決できるのがグッドデザイン
良いデザインの共通点とは?
- 鬼石さん
- abemaとwowで共通している点
- 自分が本当に使いたいか
- 情熱を持ってそれに取り組める
- abemaとwowで共通している点
- 矢野さん
- 森田さん
- CGやってるメンバが結構いる
- コアメンバーは仕事をしているというよりは自分が好きな物をただ作っている
- 仕事としてやらされているという感覚で作っているものとは持っているパワー、成長具合が違う
- 自分の仕事の中でこれをずっとやり続けたいものを見つけられたらグッドデザインな物を作れるはず
- 本多さん
- ユーザと一緒に作っていかないといけない
- でも全部を取り入れるわけではない
- 本当に必要なものは何か
- 今年のグッドデザイン対象は地図だった
- 体験、視点を重視されるようになってきた
- デザインという意味が広がってきた
- 考え抜かれた体験もデザインしたものがグッドデザインではないか
- 司会
- リクルートでは圧倒的当事者意識という表現がある
- なんで作りたいの?なんでそう思うの?
- 実は自分ってこういうことがやりたかったんだと気付ける
圧倒的当事者意識が持てない時、ターゲットとかけ離れている時はどうすればいいのか
- 矢野さん
- わからなければ聞いちゃう
- 聞いちゃうことから始めたのがidea park
- 森田さん
- 家電メーカーなど携わってなかった業界と一緒になることも
- →みんなの感覚を同じにする
- CMやPVを見て、どこがいいと思ったか、印象的だったかをディスカッションする
- 言語化されていなかったことを共有していく
- ある動きを考えたいときに「あのPVのふわっとした感じにしたい」と言って通じる
- 司会
- みんなでユーザインタビューに参加する
- 実際に参加していないと「ホントかな」と思われてしまう
これはダメ、嫌と思った失敗事例
- 本多さん
- Ontennaは最初光るだけだった
- 使ってもらったけどいらないと言われた
- 普段視覚情報に頼って生活している
- そこに光るものがあったらノイズになる
- 当事者意識に立ててなかった
- →触覚に注目
- 作るところから一緒にやっていくようになった
- Ontennaは最初光るだけだった
- 鬼石さん
- サイバーはビジネスファーストなのかを考える
- 事業化して世の中に広めていくためにドライな判断もする
- 矢野さん
- スウェーデンで無印の仕事をしていた時
- 日本しかしらなかった
- 日本の売上の構成比は2,3,4月が良かった
- しかしヨーロッパはクリスマスの時期が一番いい
- 無印はギフトアイテムがない
- ギフトアイテムをデザインしてほしいと言われた
- 国のマーケットに合わせて無印の素材で作ったけど大失敗
- 無印のコンセプトから外れている
- 無印を伝えるツールとしてクリスマスのギフトに頼ってはいけなかった
- ユーザが無印に求めているのはそれじゃないんだということに気づいた
- 森田さん
- 意見を言う人が多い、意見を聞かなきゃいけない人が多い場合はうまくいかない
- メンバーはできるだけ最小限
- 全員が当事者意識を持つ、全員がクオリティへの責任を担保する意識がないと
- 意思決定はコアメンバーに集約する
- 鬼石さん
- abemaTVは投資することが決まっていたから藤田さん入った
- いろんなサービスあるので全てに投資できない
- 成功の可能性を見出して投資してもらうのは大変