変身歌舞伎の体験設計 ―「観る」から「体験する」へ。歌舞伎の魅力を世界に発信― #designship2018
※この記事はDesignShip 2018 2日目のトーク、橋口 恭子さんによる「変身歌舞伎の体験設計 ―「観る」から「体験する」へ。歌舞伎の魅力を世界に発信―」の内容を書き起こしたものです。記事を早く出すため体裁が整っていない部分もあるかと思います。あとで気が向いたら直します。
橋口 恭子 氏登壇内容(DesignShip Webサイトより)
約400年を超える歴史を持つ日本の伝統芸能、歌舞伎。
「変身歌舞伎」は、その歌舞伎の魅力を世界に広めるため、歌舞伎特有の文化「隈取」に長年培ってきた研究成果を取り入れ、歌舞伎俳優になったかのような体験を楽しむことができるインタラクション展示だ。
とはいえ、ラスベガスでの初展示までに与えられた期間はわずか3ヶ月。コンセプト設計、体験設計、プロトタイプ、システム設計…社内外、共にチームで力をあわせ、何もないところから猛スピードで開発した。
私はその中で、主に全体の体験設計とプロトタイプ制作の担当をさせて頂いた。 本発表では、そのような変身歌舞伎の体験設計について事例を挙げながら紹介する。
トーク内容
自己紹介
デザイナーではUXリサーチャーとして働いている。
NTTがなぜDesignShipに?
NTTはアートやデザインに技術を取り込み、感動を生み出すことを目指している。ライブの様子を転送するなど。その取り組みの一つが変身歌舞伎。
変身歌舞伎とは
歌舞伎とデジタルを融合した展示。体験者は隈取りを選択する。お面の種類をデジタルが認識。体験者の動きに応じてマッピング。歌舞伎特有の間なども表現できる。
光によって、動いてないお面を、あたかも動いているように見えるように表現することも。
変身歌舞伎のゴールは日本文化に馴染みのない外国人に興味を持ってもらうこと。鑑賞ではなく、体験型にして、外国人の方にも身近に感じてもらえるように。
体験は お面の選択→AR体験→デカ顔への投影→アーカイブの展示→体験者の顔が印刷された紙のお面を配布 という流れになっている。
変身歌舞伎はアンケートの回答者の98%が好意的な反応を持っている。うまくいったのでコンテナでパッケージ化して国内外いろんなところで体験してもらっている
制作プロセス
プロジェクトのはじまり。ラスベガスで歌舞伎を上演したことがきっかけで、NTTが新しい歌舞伎の開発が始まった。開発期間2ヶ月でひと目で歌舞伎の魅力を伝える展示を行うというミッションを与えられた。隈取は歌舞伎の象徴だと考え、そこに注目した。そこでストーリーを作ってみた。コミュニケーションのために各フェーズの体験ごとに名付けを行った。
次にフェーズごとにプロトタイプを作っていく。気づいたことはどんどんメモ。顔に影を付けて立体的にするといいな、キャラを使うと世界観が壊れるからやめたほうがいいな、映像の秒数はシステムの応答時間なども考慮する、顔のパーツがはっきりするようなデカ顔にした方がいい、など。
お客様の気持ちを動かす体験設計の秘訣
- 転
起承転結の転は体験のピーク。最も重要なポイント。体験を先で意識し、どこが転に当たるのかを考える。ストーリーができても驚きが足りないということがあった。そこで顔に着目した。顔は認知的にインパクトが強い。人の強烈な認知対象である顔を切り取って、通常ではありえないサイズの顔を用意した。点を意識するということはほかのフェーズも意識するということ。強弱を付ける。
- 隙
デザインの中に隙、欠点のようなものを残すことが重要。それがひっかかりや親しみを与える。欠点があるから感情移入できる。理路整然しすぎると肩に力がはいってしまう。気づいた人のみ気づく、という体験を入れた。それによりコミュニケーションが生まれる。日本の馴染みのある音を挿入するし、あえてかっこいいものではなくしたことによって、笑いが発生した。リアルに寄せないことでそこまで恥ずかしさを感じることなく、エンターテインメント性を感じてもらうこともできた。
隙はプロトタイプしながら作ることがポイント。主軸は抑えつつ、スパイスである隙を作ることによって、ユーザとの心の距離を縮めることができる。言葉で考えるだけでなく、試行錯誤をして調整することが重要。
- 論理と直感
左脳的思考、右脳的思考それぞれ得意な人の思考パターンを考えてチーム作りをすることが重要。一貫して両方をやるという方法もあるが、担当を分けることによって集中できた。